著作権の間接侵害の判例マップの例

MYUTA事件の判例を改めて細かく読んだ結果、複製の主体が誰であるかによって、公衆送信の主体も決定してくるのではないかと考えるようになってきた。

複数の記事では公衆送信権の主体の判断として、まねきTV事件とMYUTA事件の事例を挙げ、サーバが物理的にユーザーと同数存在しているかどうかに着目しているが、どうもそれがミスリードではないか、という気持ちがMYUTA事件の判例を読んでいくうちに生まれた。

公衆送信権の主体を大きく左右した事柄は、複製の主体が原告(MYUTA側)にあったことであり、そのためサーバにアップロードされた音楽データはMYUTAが違法に複製した扱いになっている。この時点で私の目にはユーザーがアップロードするまでも無く、MYUTA側が別のルートを通じてファイルを複製した状態と同一に見える。そのような音楽データを送信する場合、登録ログイン式のサイトだとしても、1対1の私的な通信ではなく、MYUTAが不特定多数のユーザーに配布していると見えてしまう。よって公衆送信の主体がMYUTAとされたのは、複製権の主体がMYUTA側に認められたことが大きく作用していると見える。

仮に複製の主体が利用者側にあったと判断されるようなシステムであれば、登録ユーザ式のログインであっても、送信の主体は利用者側にあったと判断されたのではなかろうか。

よって、今回の間接侵害の事例について、著作権の間接侵害(3)利便性の高いサービスほど「侵害行為の主体」と見なされる傾向を参考にして、上記の表にまとめた(空白は興味があったら埋めてみる)。上記の表は色々な要素を含んでいるが、重要なのは複製の主体が誰であったか、であると自分は理解している。

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mp3変換サービスと著作権 (6) 複製しない

前回mp3変換サービスと著作権 (5) 翻訳サイトにて翻訳サービスはmp3変換サービスの構成と同等に見えるが著作権としてはどうなのかという疑問があることを書いた。

自分の中で解決したので、その思考の過程を交えて書く。

エキサイト翻訳のウェブページ翻訳の問題提起

まず、事実関係として、問題と感じているのは、エキサイト翻訳の中でもウェブページ翻訳である。ウェブページ翻訳は、URLを入力することで英語言語のサイトを日本語に機械翻訳して見せてくれたり、逆に日本語のサイトを英語に翻訳したりするサービスを提供している。

このようなサービスの仕組みとして、まず入力されたURLのサイトのデータを取得し、それを機械翻訳し、利用者に送信することが想像できる。

この場合、入力された元のURLのデータを翻訳サーバにダウンロードする時点で複製が行われる。また、複製されたデータを翻訳し、送信することは公衆送信である。よって、無断複製と無断公衆送信が行われているのではないか、という疑問を持った。しかし翻訳サービスは各社様々に展開している。問題は無いのだろう。

著作権侵害に該当しないヒントがエキサイト翻訳の規約にあるのではないか、とあたりをつけ、読むと、

 エキサイト株式会社(以下、当社と言います)は、利用者の個人的かつ私的な翻訳作業の省力化のために本翻訳サービス(以下「本サービス」といいます)を提供するものであり、利用者は当該私的利用の範囲を超えて、例えば営利目的のために翻訳結果を利用したり、当社ウェブページ翻訳の機能を使って利用者のホームページを自動翻訳するなど、本サービスによる翻訳結果を公表、引用、改変等により使用することはできません。

 また、当社は、現段階における種々の制約のために、本サービスによるいかなる翻訳結果についても、それが完全かつ正確であること、利用者にとって有用であること、利用者が本サービスを利用した目的に合致することを保証致しません。

 利用者が私的利用範囲を超え、或いは法令又は公序良俗に違反する態様で本サービスの翻訳結果を利用したことにより、又は、本サービスの翻訳結果に依拠したことにより利用者ないし第三者が損害を被った場合は、すべて利用者が負担することとします。

としており、私的利用である点を強調している。そこで利用者が私的利用のための複製を行っているというシナリオが考えられる。

検索エンジンのような暗黙の無断複製では、googleの場合はrobots.txt ファイルを使用してページをブロックまたは削除するのように拒否する方法を公開している。これはgoogleが権利者に無断で勝手にキャッシュを取得しているからであり、権利者はgoogleに対して複製の差止を行えるためだ。今回のケースでは翻訳されることを拒否できる仕組みは(検索して確認してみたところ)公開されているようには見えなかったので、無断複製ではないと考えられる。

よって私的複製の範囲に入るかどうか考察してみたが、エキサイト翻訳に限れば、同様の翻訳ソフトを利用すれば自宅でも実現可能であることは私的複製と主張するに有利だが、サーバの保守管理を行っているのはサイト運営者である点で完全ではないので、主体はサイト運営者側にあると判断されうる。

またよしんば複製が認められたとしても、公衆送信の点において、1ユーザに対して1ハードと分けている様子は見られない(録画ネット事件参照)。

そもそも私的複製を訴えられないと考えられる。例えば、ある英語の書籍を購入したが英語では可読性が悪いので、誰かに日本語に翻訳してもらいたいという要求があるとする。翻訳された結果は世間に公開するつもりはなく、自分だけが読むつもりだ。これを営利的に誰かに依頼すると、私的複製の範囲に入らない。なぜなら私的複製は複製は利用者が行わなければならず、この場合では利用者自身が翻訳(複製)を行っていないからだ。

この点から、複製しているとすれば、公衆送信侵害の線は消えず、適法であるとは言いがたいことから、前回の記事で備忘録とすることにした。

複製していない

しかし頭を冷やしてよくよく考えてみると、エキサイト翻訳は遅い。特に「訳文のみ表示」と「訳文と原文を表示」を切り替えるだけでも遅い。

通常、このようなシステムを構築する場合、負荷を大きくしないために翻訳元のデータを翻訳サーバが保存し、それを翻訳した結果と共にある一定時間、保持するものと考えられる。なぜなら、上記の訳文と原文の表記を変更した際に、すぐに訳文を表示できるようにするためである。しかし、そのようなシステム構成をとっているように思えないほどに遅い。

このことから、どうやらサーバにデータを保存しない形式ではないのか、という発想が生まれた。つまり、複製の事実がないのだ。

翻訳サーバは、翻訳のリクエストがあるごとにウェブページの取得を行い、翻訳して利用者に渡している。その間にストレージに対する保存は(見かけ上は)行われていない。よって同じページの翻訳であろうと、時間がかかる。

複製の事実がなければ、複製されたデータは翻訳サーバには存在せず、公衆送信権の侵害の事実も生まれない。つまり、翻訳元URLと利用者の1対のやり取りであり、通常の私的利用のための複製が行われていると見ることが出来る。そのため、エキサイト翻訳では、私的利用であることを強調したのではないかと考えられる。

利用者が、元の文章をどのような形で受信するのかを選んだだけだ、という形になる点が今までの発想になく新鮮だ。この論理はダウンロードとストリーミングにおける法解釈の違いとしても現れている。ダウンロードは複製だが、ストリーミングは複製として考えない(らしい)。まさに翻訳サービスは、翻訳のストリーミングとして考えることができるのだろう。

mp3変換サービスではどうなる?

この議論の発端となるmp3変換サービスに照らし合わせてみれば、動画共有サイトからリアルタイムにデータを受信しながら、かつ、リアルタイムにmp3切り出しを行いつつ、利用者に送信することを実現すれば複製に当たらず、権利侵害をしていることにはならなそうだ。

と、ここまで考えて、このサービスが現実的かどうかについては、疑問だ。

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mp3変換サービスと著作権 (5) 翻訳サイト

今までの考察でmp3変換サービスは困難であるという結論を出したが、よくよく考えてみれば翻訳サイトも同様なシステムを備えていると考えられるのではないか?という疑問があり、今はそれについて規約を読んで考えている。

翻訳サイトに関しては私的な利用なら大丈夫なのかどうか大いに疑問がある。備忘録として書いておこう。

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今回の選挙後の記事と活発だった人たち

今回の選挙について民主勝ち過ぎ、「2大政党制」雲散霧消か「ネトウヨ」の敗北、「ネットの力」は強くない?ネトウヨ大憤死の巻ずっと自分の事をネトウヨだと思っていたなど、面白い記事が出ている。

選挙に関わるインターネットのWeb上の動きについて何度か軽くしらべたエントリを書いたが、特にネット掲示板とその思想について興味深かった。

この観察からレッテル張りとして多く使われているネトウヨという言葉はどうやら不適切だろうと思えるようになってきた。

そして勝手に推測してみようと思う。

推測

このようなコメントを多くするタイプは、個人的なステレオタイプでは若年層であり、確証はないが予想では16〜24の年の頃あたりではないかと推測している。彼らは携帯電話やPCを重視することから、親類からインターネットに対する嫌悪感を抱かれている可能性が高く、彼らが重要視しているSNSなどの批判も意識の水面下では行われていることだろうと考えられる。その思考の先には親類が携帯電話やPCを触らないから信じられないのだ、テレビや新聞の情報ばかりに頼っているからだ、という到達点が見える。

そこでインターネット上で話題になっている事柄でテレビや新聞で取り上げていないことを挙げたり、またTBS報道における偏向を指摘することによって、自信を持つようになり、インターネットから情報を仕入れることに対する優位性を感じるようになってきた。このあたりから、多くの人がインターネットで話題にしている(ように見える)事柄は正しいと思えるようになっており、8割方を信じるようになってくる。結果として、論理を重んじずに「○○は○○だ」という短絡的な結論を口にするようになってくる。自身は選挙権を持っておらず、直接影響することが難しい立場にある。

と、ここまで書いて、これは2か3人の規模のものじゃないのかと疑問になるが、過去のブログの瞬間最大風速を見る限りは少なくなさそうな気もする。

このような人々が政治に興味を持ちコメントしていること自体は、活発な意見交換を誘発させているのは確かなので、もっと1つ1つの政策や方針について詳しく正しく議論できるような場所を用意できれば、建設的でむしろ良い方向に向かうのではないか、と思った台風の日。

日本の船出は嵐だったとさ。

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EC2を触ってみた結果について

ec2独特の作業が多くて調べるのが大変だった。

AMI作成

カスタマイズAMI作成までやった。ec2で起動するためのOSイメージはamazon公式や有志の手で作成されており、Ubuntuもあった。しかしインスタンスを落とす運用をする場合、初期化されてしまい、OSイメージが元の状態に戻ってしまう。それを回避するのがカスタマイズAMIであり、自分で構築したOSイメージを保存しておくことで、それをec2に乗せて起動することができる。

カスタマイズしたAMIは、amazonのオンラインストレージサービスであるs3上に乗せる必要があり、これもサインアップする必要あり。しかも保持しているだけでお金を食うが、大きいイメージでなければ問題ない。なお両方とも米国であれば、s3からec2へのデータ転送は課金されない。

性能

smallの1CPUの遅さに萎えた。extra largeの8CPUは素敵。が、値段も8倍。

1日1時間だけ爆速extra largeを起動するとして$0.8×30=$24。XenのVPSが借りられる価格、それもsmallの2,3倍程度のCPUを期待できる。

使い分けとしては、不定期に爆速処理を使いたい場合はec2,定期的にログ取ったり解析にしたりをしたい場合は格安VPSで。

まとめ

ec2はインスタンスの消し忘れが怖くて怖くてたまらない。特にextra largeで$0.8/1h課金されているとき。

ec2で何か面白いことをやろうとしたが、面白いと思っていたことがよくよく検討してみると不味いということが分かったので一旦休止。今回はec2でubuntu動かしてカスタムイメージ作れたことで満足。

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コンビニのコピー機は自動複製機器

コンビニのコピー機は自動複製機器であり、本来であれば、私的複製の範囲外になる。

(自動複製機器についての経過措置)
第5条の2 著作権法第30条第1項第1号及び第119条第2項第2号の規定の適用については、当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする。

(昭59法46・追加、平4法106・一部改正、平11法77・一部改正、平18法121・一部改正)

経過措置によって文章と図画の複製に関しては、含まない経過措置がなされている。

つまり、前回、スキャナとインターネット喫茶の件で自動複製機器としたが、スキャナが専ら文書又は図画の複製に供するものであると認められれば、私的複製として認められる、でいいかな。

この結果次第で、全面的に自動複製機器の設置を禁止するのか、幅を広げるのかが議論されていくのかもしれない。

参考:私的複製に関するこれまでの改正

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mp3変換サービスと著作権 (4)

前回まで動画サイトとmp3変換サービスについて考察を行った。

前回までの議論の難しさは動画サイトの私的複製と絡めると、どれほど面倒であるか、という点にあった。

動画サイトとの関連の切り離し

それでは、例えば、自分が権利者である動画から、mp3を抜き出す行為をサイトに依頼する方法についてはどうだろうか。サイト運営者は、サイト利用者が権利を持っている動画からmp3を抜き出すことを謳う。利用者同士の動画の共有は行われず、利用者がアップロードを行い、運営がそれに対してmp3抜き出しを行い、利用者がダウンロードを用いて取り戻すというシナリオだ。その場合、第3者の権利を侵すことは無いので、合法であると考えられる。

この場合、サイト運営者は利用者と1対1対応するため、利用者が変換して欲しい動画をアップロードしていく場合、1つ1つ権利者がどうであるかの確認は事実上無理であると考えられし、プライバシ保護のための動画の確認は行わない。そうすることで、サイト運営者は権利者がどうであるかについては、利用者の判断を信じるしかなく、利用者が複製の主体と見なすことができるのではないか。

この議論の争点

この議論の争点は、私的複製か否かではなく、サイト運営者が利用者が持ち込んだ動画の権利を知りえたかどうか、になる。これは通常のストレージサービスと同様の言い分になる。この方針を取る場合、動画サイトとの連携に関しては積極的に示してはならない。第3者の手でこういう風に利用することも出来る、と流布されるのを待つような流れになる。また現状のような特定の動画サイトとの連携は、まずもってありえない。

前回の結論に付け足して、もう1つの結論は、この一般に動画のmp3変換を請け負う業態になるだろう。

うーん、正しいのだろうか。

追記:プロバイダ制限責任法

第三条  特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。

一  当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。

二  当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合にいくつかの例外を除いて賠償の責めに任じない。例外の1つは情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたときで、知らなければ大丈夫という話はここから来ている(はず)。

ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでないとあるので、情報の発信者、つまり無断複製の侵害の主体として運営者が認められると、発信者はサイト運営者であり、この限りではないので、賠償責任はある、ということで。

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