来年からの著作権への認識が大きく変わるかもしれない、そんな裁判が開かれることになっていたようで驚いた。
最高裁、まねきTV訴訟で弁論日指定、テレビ局側敗訴見直しかという記事が公開されている。
以前、TV番組の海外転送は適法判断(知財高裁)という記事を書いた。まねきTVは、ソニー製のロケーションフリーテレビを預かり、海外出張・移住者向けにインターネットを通じてテレビ放送を見ることができるようにするための場所貸し、ハウジングサービスを行っていた。これについて、民放連が違法であると裁判を起こしていた。結果として、ハウジングサービスを運営する会社とかかわりの無い第三者が提供したサーバ(ロケーションフリーテレビ)を預かることは適法である、との判断が知財高裁によってされた。
まねきTVとロケーションフリーテレビは別会社だが、ロクラク事件においては同一の会社によって製品とサービスの提供が行われており、これも適法判断がされた。この事件においての適法判断は、まねきTVの適法判断がよりどころになっているようなものと私は思っている。
今回まねきTVの弁論期日が12月に指定された。重大な証拠の発見、もしくは判定の覆りの可能性がなければ、最高裁まであがらないものとの認識がある。つまり、まねきTVに関して、判定が覆りうる可能性がある。
可能性としてどの部分の判定が怪しいのか、久しぶりに著作権の間接侵害の判例マップの例を見直した。ロケーションフリーTV自体は録画機能は所有していない(どうやらHDDレコーダーと連携して利用するようだ)。複製しなければ問題ない、と判断されるような問題にはしないだろうなので、どうやら送信可能化権の侵害を行っているかどうかを争点にしているような気がする。次点としては複製の主体はサービス運営者である、との主張か。
今までの判断としては、複製権「複製しているか=YES」「複製の主体は=ユーザ=私的複製」、公衆送信権「自動公衆送信権を侵害しているか=NO、不特定配信していないし特定多数への配信もしてない、なぜなら、送信の主体=ユーザ」「送信可能化権を侵害しているか=NO、まねきTVはあたらない」というものだった。
この判決が覆るポイントについて法律を知らないなりに考えてみた。可能性は2つ、公衆送信の主体がサービス運営側にあるかどうかがポイント、そして、そもそもロケーションフリーテレビの存在自体が公衆送信権を逸脱しておりサービス運営者は幇助とみなされるかどうかがポイント(主犯はユーザ?)…のような気がしてきている。
で、前者の公衆送信の主体がサービス運営側にある説は、普通の集合住宅の場合と比較してもあんまり筋がよろしくないような。いちゃもんつけるとすれば、”アンテナ線は共有でしょう”と言いたくなるが、共同受信や大家さんが管理しているような状況と一緒のように見える。仮に主体がサービス運営者と認めれれば、ユーザは特定多数とみなされて公衆送信権の侵害。
となれば、有力なのは、そもそもロケーションフリーテレビの存在自体が公衆送信権を侵害しているという論法であるとしか思えない。つまり、ハウジングされようが、一般家庭にあろうが、海外に公衆回線を用いて送信するのは違法である、と。匂いしか感じられないけれども。その手がかりとして、ソニーのロケーションフリーテレビについてのサイトを開いてみたところ
AV伝送機器「ロケーションフリー」関連商品の生産は完了しました。
トンズラされていた。もう逃げの体制入っているじゃないか。一時は革命的製品とされて、賞までもらっていたのに。
送信可能化権は、許諾された人(団体)にしか認められず、例えばオリンピックの放送などは国内のテレビ局に対して国外に放送するべからずとの許諾がされているという話はよく聞く。このままでは許諾に影響が出て、またテレビ局のビジネスを根底からひっくり返ずような業態が出てくるはずなので、テレビ局側は無理矢理にでも送信可能化件についてひっくり返してくるはず。
ということで、送信可能化について著作権法を見直す。
九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号及び第四十七条の五第一項第一号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。
イは自動公衆送信装置についての定義。ロは自動公衆送信装置を公衆の用に供されている電気通信回線への接続を行うことについて。
いやーな予感がしていて、どうもイの部分で、ロケーションフリーテレビは自動公衆送信装置として認められて、かつ公衆の用に供されている電気通信回線への接続=インターネットという認識になっていそうな悪寒。そんな風にひっくり返ったら、自宅のサーバに保存しておいた著作物を外出先からインターネットを通じて見るというサービスそのものが崩壊するんじゃないか?との懸念。
個人的には間違いなく今年最後の大物著作権裁判の大見物となろう。この手のサービスで最近で最高裁まで上がった例は覚えが無いので。
と、ガクブルしつつ、なんでこんな調べごとに時間を使ったのだろうと思いつつ公開した。