第3回日本ケータイ小説大賞「あたし彼女」を気合いで一気読みした感想

第3回日本ケータイ小説大賞を受賞したあたし彼女、全429ページをねっ転がりながら一気読みした。そこで、この感想はすぐに書かねばなるまいと思い、急いで書くこととした。

全ページ中380ページのところまで携帯電話で読み、電池が切れてしまったので残りはPCにて読んだ。ケータイ小説は某所において絶大に叩かれているようだったので興味があった。が、実際に読んだことがなかった実感がわかなかった。

絵のない1コマ漫画

「あたし彼女」を読んだ感想として一言で言うならば、”絵のない1コマ漫画が429ページ続いている”と感じられたことだ。

特に今回の受賞作である「あたし彼女」は、ケータイ小説の中でも異色な作品であると思う。何が異色なのかと言えば、

  • そこで切るかという改行。
  • 1ページあたりの情報量の少なさ。
  • みたいな〜、に代表される友達と話しているような文章表現。

である。特に改行については、全ページでも、文章の長さから折り返しが発生する場面がほとんどない点に驚く。そして1ページあたりの滞在時間は短くて3秒、長くて20秒程度、おそらく平均7,8秒程度だと思われる。

この作品以外の2作品をチラ見した程度で分かるケータイ小説の雰囲気では、

  • 主人公は女性。
  • 主人公の主観的な表現が中心。
  • 文章はある程度長く、折り返しが発生する。

という印象であり、1ページあたり平均でも15〜20秒かかるのではないか、と思う。

「あたし彼女」の他にはない工夫

「あたし彼女」という作品を見ていると、1コマ漫画のスライドショーを見ている気になる。少し昔に”やる夫で学ぶ「サブプライム問題」”などの文章が流行ったが、あの印象に似ている。この感覚はPCからの閲覧では分からない。

しいていえば、パワーポイントに文章が書いてあり、それをクリックして読み進める感覚に似ている。それを意図したように、改行がやたらと長く続いたと思えば、画面に一言表示されるような演出を行ったりしている。技巧的にも、PCに慣れた自分としては、かなりのカルチャーショックを感じた。

また、視点移動についても考えさせられた。改行で言葉が短く切られるので、携帯で閲覧していても、目が上下運動だけしかしていないことに気がついた。通常の文章であれば、若干の左右運動、上下運動、そのあとクリックという流れなのだが、今回は上下運動、クリックという流れだった。おそらく、あまり、文章が長い場合よりも疲れなかったと思う。

そして1ページあたりの情報量が少ないため、冗長な表現がまったくない。言葉の圧縮に挑戦している印象を受けた。あの調子で書き続けるためには、語らなければならない点を最低限の言葉で登場人物の視点、言葉を使って放つ、という作業を繰り返していくことになる。同じ目線に立たなければ、書くのは難しい。

この新しい表現方法を確立した(だろうと思う)今回の作品は、大賞に相応しいと思う。この小説を読むことで、今の若い子らたちの視点を学ばせて貰った気がする。また、技術的に大いに参考になった。寝っころがりながら楽に読めるという点も発見だった。

携帯電話向けコンテンツの方向性

携帯電話は今まで嫌いでまったく触ってこなかった。しかし、世代によって非常に力を持つ無線機器であり、避けて通ることはできない。その携帯電話において、どのような表現、どのような操作性、どのような志向性が必要なのか、考えあぐねていた。その端的な例が無償で見ることができて、非常に良かったと思う。

もし、この小説を読むのであれば1つ、アドバイスを。

  • 主人公がツンデレであると気づけないと辛い。
  • 200ページあたりから裏返るので少し楽になる。

みたいな

追記:確かにhttp://ameblo.jp/shinji-takehara/に似ているかもしれない。

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