海外出張者や移住者向けに、日本で録画したテレビ番組をインターネットの仕組みを用いて転送して、見ることができるようにするサービスがかつて存在した。そのサービスを提供するにあたって、テレビ局側が、違法だとして、裁判を起こしてきた。
かつて、このブログでも話題になってるストレージ著作権問題の件として記事にしてきた。
その関連事例の1つの結論が出たようだ。
知財高裁判決:TV番組海外転送は適法 テレビ局逆転敗訴 – 毎日jp(毎日新聞)
当然といえば、当然な判決である。
それぞれの事例をまとめてみる。
録画ネット 事例
録画したテレビ番組を海外配信するサービスとして問題となった始まり。録画ネットが録画するための機器(サーバとチューナー、ソフトウェア)を組み立て、開発、作業を行っていた。
裁判における争点は、私的複製に関して、業者が主体的に行動しているのか利用者が主体的に行動しているのかについて。録画ネットにおいては前者の業者が主体的に行動していると判断され、違法認定された。2005年11月、知財高裁、抗告棄却。テレビ局側と和解で終結。
参考:まねきTVと録画ネットとの違い 当社の見方 – 録画ネット
まねきTV 事例
録画したテレビ番組を海外配信するサービスだが、ソニー製のロケーションフリーテレビを預かり、回線をつなげるのみのハウジングサービス。
裁判における争点は、録画ネットと同じく私的複製だが、今回は利用者が主体的に行動していると判断され、適法認定される(2008年12月)。しかしながら、テレビ局側は最高裁に控訴予定。
参考:ロケフリ利用の「まねきTV」は適法、知財高裁がテレビ局側の控訴棄却
MYUTA 事例
音楽データの携帯電話向けオンラインストレージサービス。携帯電話にデータを送信するために、一度、音楽データのアップロードをサーバに対して行い、それを携帯電話からダウンロードする。
裁判における争点は、サーバにアップロードしたデータが複製権と自動公衆送信権を侵害しているかどうかについて。判決では侵害認定。被告側は控訴せずに終了。
日本デジタル家電 事例
日本デジタル家電はロケーションフリーテレビとほぼ似たような仕組みの機器、ロクラクを販売している。このロクラクの親機、子機を利用することでテレビ番組を転送することが可能になる。日本デジタル家電では、この親機をレンタルするハウジングサービスを行っている。
今回の争点はもちろん、私的使用にあたるかどうかだが、知財高裁の判決では私的使用にあたり適法判断がなされた。
個人的に今回の判例で興味深いのは、録画ネットの事例で機器を業者側が用意しているような状況において指摘複製が認められず侵害と判断されたのにもかかわらず、ラクロクの販売元である日本デジタル家電が行っているレンタル(ハウジング)サービスで適法判断されたことだ。正直、この問題は最高裁まで持っていき、確定的な判例を作っていただきたい。