Amazon.co.jp: 社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由を買った。
この本はハイパーネットという名前の企業が、素晴らしいビジネスモデルを持ちながらも、倒産してしまった流れを社長の視点から書いている。
最近、「ニコニコ動画を日本のインフラにする」–夏野氏がニコニコ動画に参画した理由という記事に驚いた。ドコモの決算資料を見るにて、夏野氏がiモードの展開に深く関わっていた人物であることを紹介した。
夏野氏のルーツを辿っていくと、途中、MBAの取得と、ベンチャー企業であるハイパーネットの副社長を務めたことが気になってくる。特にハイパーネットに関しては、「広告を見る代わりにISP料金がタダになる」というあのビジネスモデルであり、上場寸前までたどり着いていながら、倒産してしまうという不思議な顛末を迎えていることに興味が出てくる。
そこで、ハイパーネットの板倉氏について調べてみると、この本にめぐり合えた。
この本では板倉氏の頭の良さが分かる。当時としては画期的なビジネスモデルを構築している。そして、膨大な資金獲得に成功している。しかしながらも、倒産してしまうのだ。
板倉氏は「組織に対する理解が浅かった」としている(ハイパーネット倒産の原因と環境)。
本書では組織に対する理解が浅かったと締めくくられているが、ハイパーネット倒産の原因と環境では、さらに次のように述べている。
しかし、もっとも本質的な原因は、「タイミング」と「スピード」を混同したことだ。ベンチャービジネスにとって不可欠な「速さ」は経営判断や戦略展開の「速さ」だが、それ以上に「早く」スタートすることに目的を置きがちだ。世界初のビジネスモデルを誰よりも早く世に出したいという気持ちに駆られ、準備万端整わないうちにビジネスを立ち上げてしまう。僕の場合がまさにそうだった。
この言葉は非常に参考になる言葉だ。
「重要なのは目的地に一番早く着くことで、一番早く離陸することではない」
まさに至言である。
追記:
そしてハイパーネット倒産後の物語は松永真理と夏野剛に続くのである。
NGNという流れも、インフラとコンテンツを組み合わせたビジネスモデルである。インフラとコンテンツのバランスについてよく分かっている松永氏と夏野氏を招集した方が良いのではなかろうか。
夏野は振り返る。
「インターネットというのは、一番効率的な技術が必ず勝つというインフラではないんです。技術の優秀性より、よく多くの人が使っているサービスの方が勝つ。だからユーザーが”使いたくなる”ものでなければならない。