まねきTV事件の最高裁差し戻しについての答え合わせ

今年最後の大物著作権裁判として昨年の12月頃に記事を書いたが、本日、結果が出たようである。

その記事では当時は、

どうやら送信可能化権の侵害を行っているかどうかを争点にしているような気がする。次点としては複製の主体はサービス運営者である、との主張か。

と予想していたようだ。

さて、答え合わせ。

答え合わせ

判決文PDF注意。

まずは、自動公衆送信について。4ページ目。

自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。

お、おう。自動公衆送信装置である、と。つまり、インターネット=公衆の用に供されている電気通信回線であり、あて先が単一の機器であっても、自動公衆送信装置である、と。追記「インターネット=公衆の用に供されている電気通信回線」の概念は調べてみると一般認識だそうな追記おわり

こ、これは、著作物のインターネット転送サービスに多大に影響が出るのでは?次世代DLNAの家庭同士で音楽のやり取りなんかは著作物は禁止、出先で自分のサーバから音楽をストリーミングしての視聴も禁止さね。複製は許されても自動公衆送信は許されないんちゃうかな。

この時点で自動公衆送信しているので公衆送信権の侵害。問題は誰が侵害行為の主体か。5ページ目。

自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することがで
きる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。

その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当」。おおう!

おう!おう!おう!おう!おう!自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者が主体か。この作り出す行為については微妙なのだけれども、どうも、まねきTV側がベースステーション(送信機)のアンテナへの接続と設定の肩代わりをしていたらしく、その行為が送信行為の主体性を持っている、と判断されたらしい。つまり、これは送信可能化権の侵害ということかいな。

原審との違い

簡単には、イカ以下のとおり。

知財高裁:ロケーションフリーテレビは1対1の通信なのだから自動公衆送信装置ではない。よって送信可能化にはあたらず。だから主体は誰であっても構わない。

最高裁裁定:単一の機器に送信しようとも(追記不特定の者とサービス契約が可能な状態で追記おわり)公衆回線に接続したら自動公衆送信装置である。よって公衆送信権の侵害である。ついでに送信可能化権の侵害をしている。主体は業者。

個人的な予想では、「複製主体=業者」だと思っていたが「公衆送信主体=業者」という決着だった。追記今回のポイントは、ロケーションフリーの存在自体については問わないが、本件では業者が不特定多数と契約可能である点から自動公衆送信に当たると判断されたこと。業者ピンポイント狙い。追記おわり

おさらい

公衆送信権は、(無線)放送、有線放送(CATV)、自動公衆送信(インターネット)、その他の公衆送信(FAXなど)に分けられる。同一構内の送信であれば、公衆送信にあらず。

このうち、自動公衆送信は高裁判例によって1対1であれば公衆送信と判断されてこなかったが、今回の判決で(ユーザーが用意した機器でかつ)1対1であっても公衆送信であると判断された。追記それは、業者が不特定の利用者と契約できる状態にあったので、公衆への送信とみなされた追記終わり

で、実際に公衆送信がされなかった場合にも対処できるように、公衆送信可能な状態にする行為については送信可能化権として別途定められている(平成9年)。今回の事例では、例え、用意したロケーションフリーテレビが利用されなかった(実際に公衆送信されなかった)としても、いつでも送信可能な状態になっていれば、送信可能化権の侵害である。

かつ、その送信可能にした主体は利用者ではなく、業者である。たとえ、利用者が自宅でロケーションフリーテレビを利用したとしても、利用者自身が自動公衆送信をしているので、著作権者の権利を侵害しているとみなせる。

現行のロケーションフリーテレビの利用者は…著作権を侵害している…ということである。追記侵害していないっぽい。

で、アナログ放送が終了する時期にこの差し戻しを持ってきたということは、何かに配慮しちゃったんじゃないの?と思えてくる。ロケーションフリーテレビは既に発売中止しているし、アナログ放送は停波されるので、損害はそれほど大きくはないでしょ、ということで。

という判断がされたと思うのだがどうなのだろうか。自分は法律には詳しくはないので、正しくは、この事例がキチンと分かっている人(弁護士?弁理士?)の記事を見ると良いと思う。

判決の影響

あと認識が正しければ、自宅のサーバから他人の著作物のデータ(音楽・ビデオ)を手元の端末にインターネットを介して呼び出すのは、公衆送信権の侵害になるはず。3G回線を通してiPhoneでAirVideoなどを利用して他人の著作物(自分が作成したものではない著作物)の音楽や映像を自宅サーバからストリーミングして見ることは侵害行為になるのではなかろうか。追記どうやら当たらないようだ。

これについても詳しく知りたい。

追記

誰でも番組を見る契約を結ぶことができる以上、 不特定多数に番組を放送していると認められる

というニュース文面があったので、調べる。

そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。

サービスの提供者に対して、誰でも契約をすることができるので、その点において不特定の者であるとされ、自動公衆送信である、とのこと。

よって、ロケーションフリーテレビも、自宅サーバから手元に著作物を送信する行為は、侵害行為に当たらなそうだ。問題になるのは、業者が不特定の者と契約する点。ロケーションフリーテレビのケースも、自宅サーバのケースも、自分だけしか利用しないので不特定の者ではない。

すなわち、業者が行う転送サービスはアウト、というのが今回の主旨かと。

ちなみにプロキシサービスについてはどうなの?という方は改正ほやほやの第四十七条の五あたりをどうぞ。

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