学生には間違ってもいい権利がある

価値の判断基準が自分の外にある人間は表現者になれない – 発声練習

君が卒論に苦しんだ理由は自分でも分かっていると思うけど、常に外部に正解を求めたことにあるんだ。私が「どうして、それが正しいと思うの?その理由を教えて。」と聞くと、いつも君は表情を凍らせて黙ってしまったね。

大学院の教授がクソだと言われる一つの理由

「精神的な背骨が育っていないから」ではなくて、自分の意見を言わないのはそもそも研究の目的が理解できてないから。間違うのがわかってて、それを論破されるのがもうほぼ確実に予想出来てるのに、わざわざ自分からフルボッコされるようなこと言うわけないじゃん。もう黙ってるしかないじゃん。

前述の記事ではおそらく自分向けの自動質問サービスを作ろうとして撃沈されたにあるような系統の質問のことを指し示しているのだろうか。

この2つの記事を読むと、思うところがある。1つは価値基準を何処に求めるか。そしてもう1つは研究の目的を重視するかどうかだ。

自分自身、修士学生だった当時は、「工学系なので、前者は結果を出せればいい。後者は、商業利用できればいい。」と考えていた。修士時代は後者の研究の目的を商業利用まで視野に入れて基点に定め、それを実現する手法を列挙し、そのうち1つに着目するというストーリーで話を進めた。

しかしながら、研究の目的を明確に、特に商業利用、工業利用までもって行き辛い課題もあったことは確かだった。数年の間見続けた結果、動機付けがそれほどでなくても、研究が続けられるのであれば、それはそれで1つの答えなのだろうな、と思うようになった。それも個人差の1つだと勉強させられた。

今回の価値基準の話についてはおそらく表現者としてやっていくための条件としての話なので、他の分野でもそういえるかどうかは限らない。自己評価に自信過剰であれば”他の文献を読むこと”を薦めるだろうし、自己評価に自信がなくて発言できないのであれば「間違ってもいいから言うべきだ」と言うだろう。

ただ、この問題の前提としてあるのは、”何も考えていない”ということではなかろうか。自分の意見があるなら言うようにすれば良いが、何も考えが浮かんですらいないという状況もあるかもしれない。そうした状況下では、意見がないのだから、何もいえない。

違和感だったり、思い付きだったり、アイディアだったり、発想という言葉だったり、する。自分自身、人と話すたびに、そうしたアンテナの違いを感じてきた。ある時、「どうしてそれが見えていないんだよ!」と言われたことがある(おそらく時間軸を引き伸ばせば複数の人に)。それは自分の視覚分野についてのことだったが、このような個人差が思考分野でも言えるのではなかろうか。

個人的には、思考分野では他の人がしないだろう、馬鹿な発想をすることに重点を置いている。

また自分が弱いと感じている視覚分野の気づきを高めるために、元旦にイオンレイクタンに1時間ほど居て無線LANアクセスポイントに対する視覚的な感想を述べる努力をしてみたりしている。

こうしてブログを書いている行為そのものも、「間違っているかもしれないが、自分の考えを外に出す。間違っていると判断した誰かにその違和感を教えてもらうこと、もしくはそう思うのであれば同意してもらうこと。」を期待してのものだ。この記事が読める人間であれば、それが間違っているものか正しいものかの判断ができる自分なりの価値観を持っている人たちだと思う。

こうした文字を打ちながら、自分の考えを外に出すことは恥ずかしいことだとも感じる。特に自分自身が社会から剥離していると自覚しているからだ。しかし、自分の稚拙な考えを外に出さなければ、それが稚拙だったという間違いにも気づけない。そうしたことを前述の記事は言いたかったのだと思う。

よって、他人に対しては「学生には間違ってもいい権利がある。社会に出てから間違うなよ。」と言うことにしている。もちろん、社会であれば「新人には間違ってもいい権利がある。仕事をする立場、教える立場、偉い立場になってから間違うなよ。」と言うようにしたい(いわゆる社会には出ない人間が…!)。

自力でやろうとするのは素晴らしい。自分の限界を超えるために他力に頼るのもいい。しかし他力本願も、自力本願も、偏りすぎると、どうかと思う。偏ったものには価値を感じるのだが、これはどちらかというとバランスを取ることの方が難しい類なので、バランスの方に価値を感じている。これらを上手い具合にバランスする方法はないものだろうか?

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