控訴人は,NHKに対し,4259万1214円を支払え

前回書いたロクラク裁判判決文を遅れながら読んだ。

控訴人が日本デジタル家電サービス(ハウジングサービスを行っている側)。被控訴人がNHKと愉快な仲間(フジテレビ等)たち。

被控訴人の望みはこれ。

ア 控訴人は,被控訴人NHKに対し,4259万1214円及びこれに対する平成19年8月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 控訴人は,被控訴人日本テレビ,同TBS,同フジテレビ,同テレビ朝日及び同テレビ東京に対し,それぞれ279万8357円及びこれに対する平成19年8月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ウ 控訴人は,被控訴人静岡第一テレビ,同SBS,同テレビ静岡及び同あさひテレビに対し,それぞれ2038万0500円及びこれに対する平成19年8月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

気になった点は以下の通り。
以下の流れは、判決文を読むにあたり、筆者の頭の中で繰り広げられた論争であり、実際の裁判風景となんらかかわりはない、ことに注意していただきたい。

設置場所の管理と支配

被控訴人らが主張するとおり,親機ロクラクが控訴人の管理・支配する場所に設置されているとしても,次項において認定判断するとおり,本件サービスにおいて控訴人が本件番組及び本件放送に係る音又は影像の複製(以下「本件複製」という。)を行っているものと認めることはできないから,以下,当該設置状況については,利用者が親機ロクラクを自己の管理・支配する日本国内の場所(留守宅等)に設置することを選択した場合(以下「利用者が親機ロクラクを自己管理する場合」という。)を除き,すべて控訴人の管理・支配する場所に設置されているものと仮定して検討することとする。

「ハウジング業者が管理・支配している場所に設置されているとしても、ハウジング業者が主体的に複製をやってると認められないんだから、ハウジング業者が管理・支配している場所に設置したという仮定で検討しようね。」

つまり、これはテレビ局側が、”ハウジング業者が管理・支配している場所に設置してあるんだから、ハウジング業者が主体的に複製やってるんじゃないっすかwwww”と言いたい、ということだろう。

主な検討内容は以下のとおりである。

?本件サービスの目的
?機器の設置・管理
?親機ロクラクと子機ロクラクとの間の通信の管理
?複製可能なテレビ放送及びテレビ番組の範囲,
?複製のための環境整備
?控訴人が得ている経済的利益を総合すれば,控訴人が本件複製を行っていることは明らかである

本件サービスの目的
裁判所「海外での視聴を可能にするものだってのは明らかだよね。親機を管理してんのは控訴人で、利用者自身が管理すんのとはちょい違うけど、控訴人が複製やってんのかというと根拠ないよね。」

機器の設置・管理について
テレビ局「控訴人が親機とテレビアンテナと付属品の管理・支配やってんじゃん!」
裁判所「そんなんじゃ控訴人が複製やってるって認めらんねーよ。理由いってやろうか?」
裁判所「地上波アナログ放送を受信できてインターネット環境があるってことは必要不可欠の技術的前提条件だ。でもこの必要不可欠の技術的前提条件って自己管理するときも一緒だろ?」
裁判所「で、必要不可欠の技術的前提条件ってのを提供したからっつって控訴人が受信・録画・送信やったって言えないじゃん。こんだけで録画行為を支配したって言えねーよ!」

親機ロクラクと子機ロクラクとの間の通信の管理について
テレビ局「おい!親機ロクラクと子機ロクラクとの間で控訴人のサーバ使ってんぞ!これは控訴人の支配ktkr」

テレビ局「詳しく説明してやろーか。?http使ってんだよ!」
裁判所「それ、httpを採用したメールサービスっしょwwww」

テレビ局「?録画予約及び番組データの送信するために控訴人が用意したんだよ!」
裁判所「は?まぁ、いいや。後でやるわ」

テレビ局「?控訴人がIDによる認証やってんだよ!」
裁判所「メールサービスで認証やるの普通っしょwwww」

テレビ局「?この通信、控訴人のファームウェア使ってんだぜ!」
裁判所「で?」

テレビ局「?この通信、控訴人が定めた以外の通信はできないんだぜ!」
裁判所「別に利用者が自己管理する場合でも一緒っしょwwww」

複製可能な放送及びテレビ番組の範囲について
テレビ局「?ろ、録画できる場所に!限定されるじゃn!」
テレビ局「やっぱ控訴人の管理・支配じゃね?」
裁判所「別に受信できるテレビ放送が設置場所に左右されんのは、この機器に限らねーだろ!」

テレビ局「あ、後、録画可能なテレビ番組が!?控訴人のサーバから取得した番組表に限定されんじゃん!」
裁判所「だから利用者が自己管理する場合と変わんねーじゃんってばよ!」

複製のための環境整備について
テレビ局「?このサービスはな!子機ロクラクを使って、こいつの手順に従わなきゃ、親機ロクラクにアクセスして、予約録画とか録画番組とかできねーんだよ!」
裁判所「それって自己管理してる場合とかわんねーって」

テレビ局「?だから、控訴人はファームウェアを開発して組み込んで、控訴人のサーバを経由してできるようにしてんじゃねーかよ!」
裁判所「それって自己管理(ry」

テレビ局「?親子ロクラクはこういうサービスをやるための専用品だろ!?」
裁判所「自己管理乙」

控訴人が得ている経済的利益について
テレビ局「控訴人がどんだけ儲けてるか教えてやろーか!」
裁判所「親機ロクラクの保守・管理費用はとるの当たり前じゃねーか。”録画したかどうか”とか”録画回数”で変動する価格じゃねーから、”複製の対価”を受け取ったとは考えられねー。」
裁判所「仮にそんだけ儲けてよーが、”複製の対価”とは考えられねーからどうでもいんじゃね。」

まとめ
裁判所「控訴人が複製やってるとは言えねー。私的複製の範囲内っしょ。」
裁判所「ちょっといいこと言っておくわ。」

かつて,デジタル技術は今日のように発達しておらず,インターネットが普及していない環境下においては,テレビ放送をビデオ等の媒体に録画した後,これを海外にいる利用者が入手して初めて我が国で放送されたテレビ番組の視聴が可能になったものであるが,当然のことながら上記方法に由来する時間的遅延や媒体の授受に伴う相当額の経済的出費が避けられないものであった。しかしながら,我が国と海外との交流が飛躍的に拡大し,国内で放送されたテレビ番組の視聴に対する需要が急増する中,デジタル技術の飛躍的進展とインターネット環境の急速な整備により従来技術の上記のような制約を克服して,海外にいながら我が国で放送されるテレビ番組の視聴が時間的にも経済的にも著しく容易になったものである。そして,技術の飛躍的進展に伴い,新たな商品開発やサービスが創生され,より利便性の高い製品が需用者の間に普及し,家電製品としての地位を確立していく過程を辿ることは技術革新の歴史を振り返れば明らかなところである。本件サービスにおいても,利用者における適法な私的利用のための環境条件等の提供を図るものであるから,かかるサービスを利用する者が増大・累積したからといって本来適法な行為が違法に転化する余地はなく,もとよりこれにより被控訴人らの正当な利益が侵害されるものでもない。

裁判所「あとカラオケ法理と本件の事案は違うっしょ。」

個人的感想
この裁判、控訴人側弁護士4人に対してテレビ局側弁護士は総勢23人という内容のものだということが、判決文から分かる。この4人の弁護士はよく戦ってくれたと思う。

この判決文を読む限りテレビ局側はアンテナとサーバの管理・支配をえぐって控訴人側を追い込もうとしてるのだけれども、アンテナについては技術的前提条件、サーバについては自己管理の場合も一緒という風に押しのけている。

今回の裁判のキーワードは「自己管理」だった。”自己管理の場合も一緒である”ことが言えれば、ハウジングサービスは設置場所の管理・支配が異なるのみで、録画予約・番組視聴の主体性は利用者側にあるということが言えそうだ。早い話が、自分が買ったロクラクを友人に預けた場合、その友人が主体的に録画をしているのかということになる。

よって、市販品(もしくは準じる形)で、録画キットを自己管理できる状態で販売することができれば、このようなハウジングサービスは適法であることが言える、ということが分かる判決文だった。

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