クラウドって何かをAmazon EC2から考える

通販で有名なAmazonのサービスにEC2というものがあって、クラウドとか言われている。EC2は一言で言えば、計算機資源を貸すサービスで、VPSに近い。EC2は料金体系が他とは違う。

例えば他の会社のVPSプランは、メモリがどれくらい、転送量がどれくらい、HDDの容量がどれくらい、で月定額いくらですよ、という定額制な料金プランを採用する。EC2の場合は、サーバを1時間あたり起動していたらいくら、転送量を何TB使ったらいくら、という従量制な料金プランを採用する。

で、実際に計算してみると、EC2を1月中ぶんまわす結果は国内の専用サーバを借りるプランとそこまで差が出ない。

なんでそんなにEC2!EC2!と騒いでいるのかなーと、ずっと、疑問だった。

最近、気がついたのは、EC2では時間当たりの価格で提供していること、そしてAPIがあるということだった。もっとよく分かるようになったのはあくしゅ、自動的にクラウド上のサーバを増減できるソフトウェア「Wakame」というリリースだった。

EC2は時間当たりのサーバ資源の切り売りをしていたんだ、ということに、よーやく気がつくことができた。つまり、「ハイスペックなCPU資源を短時間でいいから安く利用したい」というニーズに答えるためにあるんだな、と。

VPSの発明は、1つのサーバの資源を仮想的に区切り、複数のOSをインストールできるようにした点にある。つまり1台のサーバを複数人数で共有することになるので、単体のサーバを借りるより安くなる。通常のWebホスティングに比べてOSを選択できるので自由度が高い。他のユーザが利用してないCPU資源があまっていたら、もらうことができる。

フレッツやKDDIのPONも同じような発想で、複数の回線で1つの回線を共有するよーなことをしている(はず)。だから、1Gbpsとか100Mbpsとか書いているのだけれども、そういうベストエフォートな感覚がいい。

だけれども、既存のVPSサービスには弱点があって、仕組み的に月額プランしか存在していない。やろうと思えば、1日貸しや半日貸しができるのだろうけれど、やっていない。このことによって、ある利用者が一日に1時間くらいcronまわしたいのに、他の23時間分のお金を払わなければならず、もったいないという事柄が生じる。短時間で1時間くらいの処理をやってもらいたいのに、ハイスペックな料金のサーバを23時間も空回しさせるなんてもったいなくてお金を払えない。そういう状況が生まれつつある。

そこでEC2は、APIを準備することで解決を図った。つまり、外部からインスタンスのON,OFFを制御することができて、1日に1時間だけハイスペックなサーバを動かすことを可能にしている。このことによって他の23時間の料金は発生しないのだから、その1時間が多少割高であっても無駄遣い分を減らしたお金1/24を超えることはないのだから、かまわない。

このサーバ時間1時間の買いはAPIを利用しないと、サーバに張り付いて手動でやるなんて難しい。負荷に応じてAPIを最適に調整してくれるソフトウェアがこれからもどんどん出てくるのかな、と思う。逆に、そういう操作をやらずにEC2を借りてる人は何だろうと思う。

これをWebサービスなんかの負荷が時間によって大きく変化するサービスや、最大負荷が読めないサービスなんかに換算して考えると、負荷が大きくなるごとにあらかじめ用意しておいたサーバを起動していけばいいので、月額固定費だったサーバ料金は変動費になる。機会損失は考えるなとはよく言うけれど、スケーラブルになるので機会損失が少なくなる。

個人用途でも、DBぐるんぐるんとか、クローラーぐるんぐるんとか、火急の用件だがこの動画エンコしたいとか、そういうのを低スペッコPCで時間かけてまわすのではなく、高スペックで短時間で終わらせられるとか、そーゆーメリットも出てくる。

つまり、クラウドの示すところは、大手ベンダーがでっかいデータセンターを作って、それを膨大な人の数で共有することによって、資源の無駄遣いを減らしましょうということ。膨大な人の数で共有するのだから、月額なんてちゃちなことはやめて、実時間で使った分だけ払うシステムにしましょう。それ以外の使わない資源は他の人が使いますからということ。

そういうことでクラウド言ってるんだなーぁ、ということにしている。PaasとかSaaSとかこの手のいろーんな言葉があったが、SaaSやASPはサービス提供側の話だったのに対して、クラウドはどちらかというとサーバ資源提供側の話なのかなぁ、と。

ちなみにAmazonは、Webサービス制作者側から資源料をもらうのではなく、サービス利用者側から資源料をもらうようなクレジットのサービスも始めてる。つまり、サービスを作った人からお金を取るのではなく、サービスを使った人からお金を取るということをはじめている。Amazonのアカウントは既にクレジットカードと紐づけられているので、それはやりやすい。

そんなこんなで、ようやくGoogle App Engine, PaaS, EC2に見る新しい息吹から1年半経って、内訳が頭に入ってきたな、と。表面的なことを書くのは簡単でいいなー。

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あと、Amazonから資源を借りたくない場合、例えば自社でクラウドをもちたいケースもありうる(はてな、みたいな?)。そういったケースじは、自社クラウドのためのセット、Ubuntuがクラウドパワーを獲得――「Eucalyptus」採用が主流になってくるかも。会社であまっている資産を流用したいという要求は常にあるだろうし。

注目なのは、

米国立科学財団の支援を受け、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の大学院生が中心となって開発したプロジェクトからEucalyptus Systemsというベンチャー企業が誕生した。

ということ。向こうの学生はセンスあるよなぁ。Amazon EC2のAPIと互換なので、EC2向けに作っていれば自分クラウドにも流用可能だし、自分クラウド向けに作っていれば緊急時にはEC2に移動もできること。この流れからは、EC2のAPIが標準になるのかな?、とも思える。

エコという言葉は好きじゃないけれど、サーバのエコだ。

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ベストエフォートは、回線をあまり利用していない人(たぶん6〜8割程度)が、割高になっていると予想してみる。2割のユーザを8割で支えるサービスになってきているような。多分、従量制を採用すると、6~8割の人は安くなるんじゃないのかな。こうしてみると、従量制→定額制→従量制→…、というふうに世界は動くのかしら。

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