マジコンでオリジナルのゲームを販売する権利は縛れるのかにて、ライセンスとは開発環境に付加される等のことを書いた。
このようなゲーム専用機上におけるソフトウェアの開発において、著作権などの問題が発生しうるのは開発環境である。しかしながら、その開発環境を自作してしまえば問題はない。
実際にファミコン時代において開発環境を自作し、かつ、ナムコから発売されたタイトルがある。それが田尻智氏によるクインティだ。Wikipediaには以下のように記されている。
開発環境の調達からソフト開発までインディーズ形式で完遂し、かつ市販ソフトとして正規流通したファミコンソフトは本作が唯一の存在である。
クインティの売り上げ本数は20万本を超え、クインティの収益を元に株式会社ゲームフリークを設立したとされている。
クインティに対する企画としての考え方が面白い。
「新しいアクションゲームとは、新たな動詞を考えること」という田尻の思想のもと、「めくる」という新たなアクションをベースに、簡単なシステムと操作で駆け引き、戦術、収集、発見、協力、対戦など様々なタイプの要素を詰め込むことに成功したアクションゲーム。
氏はその後、ポケットモンスターの生みの親と知られる(主人公のサトシの名前は氏に由来しているようだ)。このポケットモンスターのシステムに関しても「簡単なシステムと操作で駆け引き、戦術、収集、発見、協力、対戦」といった要素が緻密に組まれている、と言えないだろうか。
ともかく、開発環境を自作してしまうような技術の集団と、緻密な企画の両方が揃うってことは素晴らしいなぁと思う次第で。ここまで技術があったら企画はおざなりになりやすいだろうし、企画力があったら技術はいらないと考えたりしそうだし、色々あったんだな、と。
# クインティのストーリーについて
ちなみにストーリー構成も当時1989年としては斬新だった。
ラスボスが妹クインティ。クインティがガールフレンドを拉致、クインティの兄カートン(主人公)が助けに行く。典型的なヤンデレ。2P同時プレイが可能。2Pプレイヤーは主人公の友人で名前はバートン。
エンディングにたどり着くと、カートンとガールフレンドが(一般によくあるような)カップルになる場面があるのだが、その傍らでクインティがエンディング中ずっと泣いている。協力プレイでバートンと共にエンディングにたどり着くと、その泣いているクインティをバートンがなぐさめ、その場でカップルになる。
バートンがなぜ、親切にもカートンと共に危険な旅に同行してきたのかの理由がエンディングでようやく分かるという設定だった。バートンはクインティに好意を持っていた、そのクインティの暴走を止めるために旅に同行したという設定だったんですね。
当時としては、マルチエンディングな要素を持つ展開としてそこまで練られている事に感動した。そしてヤンデレをこのような時期に盛り込むとは、先見性がすごい、ですね、と今も感心している。
ファミコンにてライセンスを受けずに開発した唯一の集団について への1件のフィードバック