イノジレ(4)〜トリニトロン生産終了と液晶

ソニー、トリニトロン生産を3月末で終了の記事によると、ブラウン管「トリニトロン」の生産を3月内に終了するようだ。

液晶が出た当時は、省スペースなディスプレイとして期待が高かったが、歩留まりが悪いため割高、視野角が狭い、残像が見える、遅延がひどい等の文句を散々言われたものだった。中でも問題なのは遅延で、CRTから液晶に買い換えたが遅延がひどすぎて返品したという話もある。

そのようなひどい品質の液晶だが、現在はその弱点は克服されようとしている。しかし初期の液晶ではそのままテレビに転用など考えられない品質だった。それではどのように液晶は売れていったのか。

まずはラップトップPC市場に需要を見出した。静止画に関しては影響が小さいのでPC(オフィス)用途には向いている。視野角が狭いのは逆に考えればプライバシが守られることでもある。当時のラップトップPCはべらぼうな価格であったが、それでも買う人は居た。モノクロからカラーも見れるようになった。そうするうちにオフィス用途では問題なくなった。ある一定の水準を越えたころ、テレビへの転用が現実的になる。そして、今では上位市場まで液晶で埋め尽くされている。

液晶も当初はテレビ市場の夢を見ただろうがテレビに必要な要件を満たしていなかった。それに対してラップトップPC市場の要件は低く、液晶でも十分だった。このように破壊的イノベーションは新しい別の市場を発見する。ラップトップPC市場で持続的イノベーションを達成した後、テレビ市場でも十分な要件を得たとき、同じく持続的イノベーションを繰り返してきた旧世代のCRTは駆逐されるに至った。そうした記念すべきニュースがCRTの生産終了である。

かくいうトリニトロンも小さな町工場を世界のSONYに育て上げた井深大さんに見るように多くの逸話がある。

とはいえ、旧世代の上位製品であるCRTも捨てがたく、こうなった以上トリニトロンを1台くらい所有したいなと思うのだが、CRTは場所をとるので無理だ。

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