「イノベーション(笑)」と呼ばれる情報通信業界という記事で、意味の分かってねぇカタカナを使うな、という事柄が書かれている。
これにはビクっとなるところがあって、言葉の1つ1つの定義づけが曖昧なままに読んだりする。話していたりすると、言葉の定義づけがお互いに違うことがあったりして、通じないこともある。
記事中では(笑)としているが、ソリューションでイノベーションしている○ションな方々はこれらの意味を実は理解しているのではないかと思う。それは概念的な意味での理解であり、詳細にそれが何かというところまで下っているのかどうかは分からない。しかし、そのようにイノベーションな方々はそこまで愚かではないし、非常に優秀だ。ITという言葉を流行らせるために、イットと呼ばせる策士も内包するこの業界の営業力には驚かされる。イノベーションのジレンマなりに考えれば、もし大企業でイノベーションを実現しようものなら高難易度のことであり、そのようなことは真に実力のあるチームでなければ、なし得ない。これはすごいことだ。
内部の人の感覚をシミュレートしてみると、どうも行うべき改善をまとめたコンセプトを文章ではなく、キーワードに集約する過程で「イノベーション」という言葉が適当であるという結論になったのではないかと思う。例えば単なるお菓子を意味するものではなく、少し上品なデザートをスイーツと呼ぶことでそのコンセプトを広く知らしめたように、イノベーションという言葉でそれまでの何かのキーワードを呼びかえることで新しいコンセプトを伝えようとした営業努力が生んだものだと感じている。そうした言葉を連呼することだけでも、言葉が意味を持ち、組織としては感覚の共有が行われていくものなのかもしれない。
マスコミ(=日経)が軽薄なキーワードを発信しているのも、読者の気を引くことが読者のためになると信じているからだ。読者は見たことのないカタカナキーワードがあると調べようとする。パラダイムがシフトしたと感じる。そうなると真摯に勉強しようと思う。営業者は、読者が勉強していることを知っているからその言葉を使える。しかし勉強していない、例えば勉強会に来ているようなレベルの人に対しては、その意味の教育から始めなければならない。そのことが欠けていたという話なのだろう。
ただし、外で何が流行るといっているかどうかに関わらず、自身でどの時代に何の価値があり、何が必要になるので、何をするべきか、それをどういう言葉で伝えるべきか、ということを考えることは大事だ。そういった予言じみた狂言を自分の恥を恐れず行える人にはそれほど会ったことがない(巻き込まれる方はたまったものではないが…)。